エッセイ

東京を滅ぼした記憶

私は以前、この世のどこか。「東京」という特定の地域を自分の手で滅ぼしたことがありました。

私は科学者で、硬いコンクリートを柔らかいゴムに変える液体を開発することに成功したのです。

嬉しくなって東京の街いっぱいにその液体を撒きました。

ゴムになったコンクリートにすかさず傷をつけ、東京湾から順に都会の皮を剥いでやりました。倒れていくビルが、1つのまとまりになっていく姿は本当に見事だったのですよ。

街に突き出るスカイツリーをへし折って新宿に突き刺したり、騒然とした渋谷の街からパーリーピーポーだけを取り出して国会へ詰め込んだりして楽しかったです。

造られた星は茫漠として何も無かった世界へと煌めきはじめ、私は初めて生きている心地がしたのです。夜は昼のように、昼は夜のように、涼しくて温かい。誰もいないやさしい世界は私の為にあったのだけど、いい所で撃たれてしまったね。

ノイズが走る色彩の中で最後に聞こえたのは地下鉄が発車する合図と、電子音の小鳥の声でした。

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